法令・制度解説

派遣先管理台帳の作り方|受入企業の記載・保存手順

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

11分
目次

派遣先管理台帳は、まず事業所等ごとの対象を判定し、対象なら派遣労働者ごとの就業実績を記録します。記載事項を埋めるだけでなく、派遣元への通知と、派遣が終わった後の保存までが受入企業の仕事です。少人数の事業所等には作成・記載の適用除外があるため、人数の数え方から確認します。

「公開されている様式を使えば足りるのか、誰が勤務時刻を記入するのか」と迷う場面があります。ひな形の選択、現場での入力、派遣元への連絡を一人の担当にまとめると、記録の根拠が追いにくくなります。

本記事では、台帳の適用判定から様式選択、日別の記載、通知、3年間の保存までを順に説明します。労働者派遣法第42条と施行規則第35条〜第37条の2026年10月1日施行版を根拠にします。

本記事で分かること

  • 台帳を作成・記載する事業所等の判定方法
  • 就業日、勤務時刻、苦情、教育訓練の記録欄
  • 派遣元へ通知する事項と保存期間の起算日
  • 現場と人事、派遣元で分ける担当

結論:派遣先管理台帳の作り方(早見表)

派遣先管理台帳とは、派遣先が派遣労働者ごとの就業状況などを記録する法定の台帳です。事業所等ごとに作成しますが、当該事業所等の指揮命令下で働く派遣労働者数と、そこで雇用する労働者数の合計が5人を超えないときは、作成と記載を要しません。人数は派遣労働者だけで数えません。

作業主な確認資料根拠
対象判定事業所等の派遣労働者数と雇用労働者数派遣法施行規則第35条第3項
様式選択派遣先管理台帳の様式例労働者派遣法第42条第1項
日別記録就業日、始業・終業、休憩、業務同項第5号〜第7号
派遣元への通知台帳記載事項のうち法定の通知対象同条第3項
保存派遣が終了した日から3年間同条第2項、施行規則第37条

福島労働局は派遣先向けの様式例・記載例を公表しています(2026年10月21日確認)。台帳と併せて受入企業の抵触日管理も確認すると、記録する期間の取り違えを減らせます。

対象判定からひな形選択まで進める

作成の前に事業所等の人数を確認します。派遣先管理台帳は会社全体で一つ作るものではありません。拠点ごとの対象判定と、その拠点で使う記録の形を決めます。

対象となる事業所か確認する

労働者派遣法施行規則第35条第1項は、台帳を事業所等ごとに作ると定めます。同条第3項の適用除外は、派遣先がその事業所等で指揮命令する派遣労働者と、その事業所等で雇用する労働者の合計が5人を超えない場合です。派遣労働者のみが5人以下でも、合計が5人を超えればこの除外の説明は当てはまりません。

人数の判定表には、拠点名、派遣労働者数、雇用労働者数、合計、判定時点を記録します。適用除外に当たっても、労働者派遣法第42条第3項が定める派遣元への通知まで不要と決めつけないようにします。対象の変化がありうるため、受入人数の変更時には再度判定します。

派遣労働者と雇用労働者の合計で台帳作成の要否を判定する図
派遣労働者と雇用労働者の合計で台帳作成の要否を判定する図

労働局の様式例から欄を選ぶ

福島労働局の公表ページには、派遣先管理台帳の様式例と記載例があり、抵触日の通知書やタイムシートも派遣先向け資料として並んでいます。まず労働者派遣法第42条の記載事項と様式例を照合し、社内の入力担当を欄ごとに決めます。様式の見た目だけを合わせても、法定事項が抜ければ記録として足りません。

台帳に用いる事業所の識別欄は、個別契約書の就業場所と一致させます。派遣元から届く通知事項を転記する欄と、派遣先が勤務実績を確認する欄を分けると、更新元が分かります。様式例は2026年10月21日に確認したもので、使用時は公開元の版も確かめます。

就業日ごとの実績と苦情処理を記録する

就業実績と苦情処理は別欄にします。勤務の事実は現場、派遣元から届く属性情報は人事が持つ場合があります。どの記録をもとに台帳へ記入するかを決めます。

記載する情報主な入力元確認する相手
就業日・時刻・休憩タイムシート指揮命令者
従事した業務個別契約書と現場記録現場責任者
苦情の申出と処理相談記録派遣先責任者と派遣元
教育訓練の日時・内容研修記録実施担当者

就業日と勤務時刻を転記する

労働者派遣法第42条第1項第5号・第6号は、派遣就業をした日と、その日ごとの始業・終業時刻、休憩時間を記録事項にしています。所定のシフトだけでは実際の勤務時刻を示せません。タイムシートと現場の修正記録を照合し、後から時刻を直した場合は変更理由と確認者を残します。

派遣労働者が複数の業務を担当する場合は、個別契約書に記された業務と現場の作業記録を突き合わせます。第7号は従事した業務の種類を求めるため、契約書の職種名だけを機械的に転記するのではなく、実際の仕事の範囲を確認します。

タイムシートと個別契約書から就業日・勤務時刻を台帳へ転記する図
タイムシートと個別契約書から就業日・勤務時刻を台帳へ転記する図

苦情と教育訓練を照合する

第42条第1項第8号は、派遣労働者から申し出た苦情の処理に関する事項を記載対象とします。苦情の内容だけでなく、受けた時点、派遣元への連絡、対応の経過を確認します。第10号は省令で定める教育訓練を行った日時と内容を記録事項にしており、全ての研修を無条件に同じ欄へ入れるという意味ではありません。

相談窓口の記録と台帳の記載が食い違うと、後から派遣元と対応を確認しにくくなります。苦情に関する個人情報の扱いに配慮しつつ、派遣先責任者が必要な記録へアクセスできるようにします。教育訓練は実施担当者から日時と内容の確定情報を受け取ります。

苦情処理の記録と教育訓練の日時を別欄で照合する図
苦情処理の記録と教育訓練の日時を別欄で照合する図

派遣元への通知と保存を締める

台帳への記載、派遣元への通知、保存は異なる工程です。派遣が続いている間の更新だけで終わらず、終了後の保存起算日まで追います。通知対象の抽出は法第42条第3項を基準にします。

通知する事項を抽出する

労働者派遣法第42条第3項は、台帳の記載事項のうち第1項第4号を除く事項を派遣元へ通知することを定めています。第4号は派遣元事業主の氏名又は名称です。台帳全体をそのまま送るのか、法定の通知対象を別の書面に抜き出すのかは、社内の手順と派遣元との受渡し方法を確認します。

適用除外の事業所等で台帳の作成・記載を要しない場合も、第35条第3項は第42条第3項の通知義務を免除する規定ではありません。人数判定表の結果だけで「通知なし」と決めず、派遣元へ渡す事項を別に確認します。いつ、どの版を渡したかが残る方法を選びます。

派遣先管理台帳の記載事項から派遣元通知の対象を取り出す図
派遣先管理台帳の記載事項から派遣元通知の対象を取り出す図

保存場所と更新権限を決める

労働者派遣法第42条第2項は台帳の3年間保存を定め、施行規則第37条はその起算日を労働者派遣の終了の日とします。作成日や最後の記入日から一律に数えると、保存の終了時点がずれます。派遣労働者ごとに終了日を確かめ、書面や電子ファイルの保存先と閲覧権限を定めます。

保存場所が拠点ごとに違う場合でも、本社が所在を追える一覧を作ると、担当者交代時に記録を探しやすくなります。訂正が必要なときは元の記載と変更理由を追えるようにし、終了後も期間内の記録を保持します。厚生労働省の施行規則の公表本文を2026年10月21日に確認しました。

電子ファイルで管理する場合は、閲覧できる人と書き換えられる人を分けます。保存期間中に人事システムを切り替えるなら、旧システムの台帳を読める形式で取り出せるか、派遣労働者ごとの終了日と結び付いたまま移せるかを確認します。保存先を決めるだけでなく、必要なときに対象者の記録を検索できることも運用上の確認点です。

記入漏れと対象判定の失敗を防ぐ

時刻の記入漏れと適用除外の誤判定は別の問題です。前者は日別データの受渡し、後者は事業所等の人数の確認に原因があります。それぞれ別の点検欄を用意します。

勤務時刻の記入漏れ

台帳に就業日の行はあるのに、休憩や終了時刻が空欄なら、タイムシートと現場の承認記録へ戻って確認します。勤務予定のシフト表を実績の代わりにしないことが大切です。夜間や日付をまたぐ勤務は、どの日の就業として記録するかを現場の報告と照合します。

記入漏れが見つかったら、派遣元へ通知済みの情報にも影響がないか確かめます。台帳の修正と通知の更新を別々の作業として扱い、担当を決めます。記録を訂正した理由が後で分かるよう、確認した原資料と変更日を残します。

適用判定の未確認

少人数の事業所等では、派遣労働者数だけを見て適用除外と決める誤りに注意します。施行規則第35条第3項が数えるのは、その事業所等で指揮命令下に働く派遣労働者と、雇用する労働者の合計です。会社全体の人数とも異なるため、対象の事業所等を先に特定します。

合計が5人を超えない時点と、増員後の時点では判定が変わりえます。派遣受入れの人数を変えるときは、台帳の作成・記載の要否を再確認します。人数が少ないから全ての記録が不要になるわけではなく、契約、通知、勤務の資料は別の役割を持ちます。

外部に依頼する場合の分担

台帳の作成主体は派遣先です。派遣元から受け取る情報や様式例を使う場合も、派遣先が記録する就業実績と派遣元が通知する事項を混ぜません。外部へ入力作業を委ねる契約でも、この分担を確認します。

派遣元が通知する事項

派遣元は派遣の開始に当たり、派遣労働者に関する法定の事項を派遣先へ通知します。受入企業は通知書に記された派遣労働者の区分、派遣元の事業所、責任者などを、個別契約書と照合して受け取ります。通知内容と実際の就業場所が違う場合、台帳への転記だけで済ませず派遣元へ確認します。

派遣元からの通知が台帳に必要な情報の全てを埋めるわけではありません。就業日ごとの時刻や派遣先で生じた苦情処理は、受入現場で確認する情報です。通知書と現場記録に異なる更新時点があることを、台帳の担当者へ伝えます。

派遣先が記録する事項

派遣先は、自社の指揮命令下で行われた就業の実績を記録します。労働者派遣法第42条第1項の事項には、勤務時刻、業務の種類、苦情処理、教育訓練などが含まれます。派遣元から届いた書面を保管するだけでは、現場の実績の欄を満たせません。

現場の指揮命令者が事実を確認し、人事が書類の版と保存先を管理する形なら、記録の根拠を分けられます。派遣元へ通知すべき事項は、完成した台帳と照合して別途送ります。台帳の形式を選ぶ際は、受入企業の運用に合う入力順を優先します。

派遣先責任者は、現場と人事で記載内容が分かれた場合に照合する窓口を明確にします。たとえばタイムシートの修正が月次で届くなら、台帳の時刻と派遣元へ通知済みの情報へ影響するかを確認します。苦情処理や教育訓練は勤務時間と別の記録元があるため、毎月の締め日にそれぞれの担当から確定情報を受け取る流れを作ります。

指揮命令者の勤務実績確認と人事の台帳保存を分担する図
指揮命令者の勤務実績確認と人事の台帳保存を分担する図

指揮命令者と人事の分担は、現場が就業日ごとの実績を確かめ、人事が台帳の版と保存期間を管理する形にします。担当が替わるときは、未記載の日がないかも引き継ぎます。

まとめ

派遣先管理台帳は、対象事業所等を判定し、就業実績と苦情処理などを派遣労働者ごとに記録します。作成・記載の適用除外は、派遣労働者とその事業所等で雇用する労働者の合計で判断します。台帳と別に、派遣元への通知を確かめ、派遣終了日から3年間の保存を管理します。

期間制限の資料は抵触日を受入企業が管理する方法で確認できます。2026年改正の受入実務と法令・制度解説の一覧も参照できます。

よくある質問

Q. 派遣先管理台帳は全事業所で必要ですか
全ての事業所等で作成・記載が必要なわけではありません。その事業所等で指揮命令下に働く派遣労働者と雇用する労働者の合計が5人を超えないときは、施行規則第35条第3項により作成・記載を要しません。派遣労働者だけの人数で判定せず、派遣元への通知も別に確認します。
Q. 派遣先管理台帳には何を記録しますか
派遣就業をした日と勤務時刻、業務の種類、苦情処理、教育訓練などを記録します。労働者派遣法第42条第1項には、派遣労働者の区分や派遣元に関する事項もあり、施行規則第36条が追加の省令事項を定めています。様式例と条文を照らし、欄の欠落を確かめます。
Q. 台帳はいつまで保存しますか
派遣が終了した日から3年間保存します。労働者派遣法第42条第2項が保存期間を定め、施行規則第37条が起算日を定めています。台帳を作った日や最後に入力した日から数えるのではありません。派遣労働者ごとの終了日を確認して、保管先と廃棄予定を管理します。

出典

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